問い
電話番号やURLは、単なる情報ではなく宛先として働きます。宛先が正しいのに別の場所へ届く、同じ建物の経路だけがずれる、移動した人だけが違う状態に入る。そうした可能性を順に並べます。
ただし、章1と同じく、作品ごとの場面は未照合です。ここで先に行うのは、空間のずれを一つの怪異へまとめないための分類です。
Film Infernoでは、同じ場所への回帰、通路の変形、分岐や物の位置の変化が実際に描かれます。経路の異常を、洞窟の正体や登場人物の行方と分けて見るための図です。
経路がずれる同じ場所に戻ってくる、通路の構造が変わる、以前あった物の位置が変わる。Film Infernoで実際に描かれる経路の異常は、この形に近い。
映像の保管者は洞窟自体が存在しないと証言しますが、カップルの所在、写真の人物、映像が途切れた理由は不明です。探索で確認できない先があることと、その先の正体を知ることは同じではありません。
情報系から空間系へ
番号やリンクは、呼び出す操作です。操作の結果として声だけが届くのか、画像やページまで開くのか、それとも利用者のいる空間に変化が及ぶのか。情報が通る段階を分けます。
BASEMENTでは、通常の利用者と異常な降下が同じ防犯カメラ記録、同じ連続した時刻の中へ重なります。人物同士が実際に同じ空間にいたと決めず、記録上の重なりを整理します。
同じ昇降機に、二つの状態通常の利用者と異常な降下は、同じ記録・同じ連続した時間の中にある。すれ違うように見える場面もあるが、互いに反応する様子はない。扉の外に何があるかは、映像からは分からない。
1階表示のまま下降が続き、表示が空白になった先で扉は開きます。しかし扉外も女性のその後も映りません。表示の乱れが記録異常か、状態の重なりかも決定できません。
番号とURLは宛先である
番号やURLを扱う作品では、数字の象徴的な意味より先に、その入力が何を開き、何を移動させ、何を残すのかを確認します。リンクが動作することと、リンク先が何を意味するかは別の問いです。
Telephone Numberの通話とHidden linkの16ページを、相手や最深部が確定しないまま機能する「宛先」として比較します。
番号とURLは宛先である番号は声だけを部分的に通す宛先として、URLは構造の同じ層を16回経由する宛先として働く。どちらも最深部・相手側は確定していない。
電話は観察者越しにしか描かれず、応答の不在と非共有を区別できません。URLでは同構造のページを16回たどりますが、層ごとの内容の蓄積は確認できません。「十六層地獄」は作中事実ではなく外部類比です。
Strange MessagesStrange Messages
この作品の記述の出典は、筆者による視聴確認です。タイムコードは未設定です。
FACT留守番電話に残るのは声のみで、他の記録形式は伴わない。
FACT複数の異なる番号に届くのではなく、単一の電話番号に繰り返し届く。
FACT受け手本人の証言によれば、主に深夜帯に月に数回のペースでかかってくる。
FACT声の主は特定されず、身元や生死に触れる場面もない。
FACT受け手が応答しようとする、かけ直す、話しかけるといった場面はない。
UNRESOLVED録音の内容が再生ごとに変わるかどうかは、作品内で試されておらず判断できない。章1のCursed Video・MINDSEEKERとの比較対象にはならない。
Telephone NumberTelephone Number
この作品の記述の出典は、筆者による視聴確認です。一部の発言にはタイムコード付きのYouTubeリンクを付記しています。それ以外はタイムコードは未設定です。
FACT作品には、女子高生が演じる劇中ドラマ部分(第五話として提示される再現劇)と、実際の調査・投稿映像の部分という二つの層がある。
FACT通話の場面は、電話をかけている人物を周囲が観察する形で描かれる。視聴者は呼び出し音も、電話口の相手の声も聞いていない。
FACT作中で確認できる通話の結果は二つある。一つは、番号の現在の所有者とされる一般女性が応答し、普通の会話が成立する場合。もう一つは、応答の様子が一切聞こえないまま、かけた人物が「もしもし」を延々と繰り返し続ける場合である。 (6:54)
FACT後者の結末は、冒頭の劇中ドラマが迎える結末と同じ型である。
FACT作中で声が確認できる相手は、この一般女性のみである。
FACT先輩格の人物が架電した際は、一般女性が応答し会話が成立した。
FACT後に主要な登場人物が架電した際は、応答が聞こえないまま「もしもし」を繰り返す結果となり、その後の説明がないまま映像が終わる。 (6:54)
FACT番号は元々一般女性が使用しており、後に別の人物が偶然取得したとされる。
FACT番号自体が変わる、または他の番号につながるという描写はない。
INFERENCE「もしもし」だけが返る通話は、声だけが一部越えてくる部分接続として読める。第1章末で定義した接続の三段階のうち、部分接続に近い。 (6:54)
INFERENCE劇中ドラマの結末と、実際の人物が迎える結末が一致することから、劇中で描かれた物語が、外側の出来事の型を先取りしているように見える。
UNRESOLVED応答が「ない」のか、「あるが視聴者・周囲には伝わっていない」のかは、通話が観察者越しにしか描かれないため区別できない。
UNRESOLVED先輩格の人物が話した一般女性と、後に応答がなかった際の番号の所有者が、同一人物・同一時点の所有者であるかは確認できない。所有者が入れ替わっていた可能性を排除できない。
Hidden linkHidden link
この作品の記述の出典は、筆者による視聴確認です。タイムコードは未設定です。
FACT舞台は同窓会の告知更新用サイトで、外見は一般的なものである。
FACT隠しリンクは、カーソルを画面上で動かし、カーソルの見た目が変化した箇所をクリックすることで見つかり、たどることができる。
FACT「コウカ」という名のページ内にある隠しリンクをたどると、一見何もない真っ暗な画面になり、スクロールすると「?」マークのアイコンが一つだけ配置されたページに至る。
FACTその「?」マークのアイコンを押すと、同じ構造(暗転、スクロール、「?」マークを探して押す)を持つ別のページへ遷移する。
FACT構造の同じページを経由する操作が16回繰り返され、16回目にダウンロードリンクのあるページへ至る。
FACTダウンロードされるのはパスワード付きのZIPファイルで、作中では解析ツールでパスワードを突破している。中身は画像ファイル1枚のみ。
FACTダウンロードリンクがあったページにも別の隠しリンクがあり、そこから6,000を超える隠しリンクが見つかり続けていると、現在進行形で語られる。
FACTサイトの作成者について語られるのは、同窓会メンバーの中でコーディングができる人物が作ったということのみで、詳細は不明である。
FACTこれを見た人物への影響や結果は、現時点では描かれていない。
INFERENCE「16」は単発のクリック回数ではなく、構造の同一な16のページを実際に経由した回数である。この点で、索引や階層という相馬氏の語彙と構造的に近い。
INFERENCE相馬氏の索引の読みでは各層で内容が変化し、特定の位置づけや系列が生まれる。一方、この16ページは構造がそのまま反復されるだけで、層ごとに内容が積み上がっていく様子は確認できない。構造の一致点と相違点の両方を残す必要がある。
UNRESOLVEDダウンロードされた画像1枚の中身は未確認。
UNRESOLVEDサイトの作成者の詳細、隠しリンクを仕込んだ意図は語られない。
BivouacBivouac
この作品の記述の出典は、筆者による視聴確認です。タイムコードは未設定です。
FACT異常が起きるまでに、同じ行為の反復は描かれない。遭難しかけて偶然たどり着いた野営地であり、一度きりの状況である。
FACT夜を明かそうとする中、物音でテントの外に出ると、見覚えのない赤いリボン状のものが木にくくりつけられ、見覚えのない石が積まれているのが見つかる。
FACT撮影者自身が配信者で、後日編集して公開する前提の記録として撮っている。
FACT異常の直前に、掘る、特定の順序で儀式的な行動をするといった不自然な描写はない。
FACT撮影者は自力で下山しており、その後の説明や結末の言及はない。
INFERENCE反復なしで条件が成立したように見える。相馬氏が「反復は続く限り何も起こさない」と述べていることと、この作品は整合する形になる。
UNRESOLVEDリボンと石を置いたのが誰か、いつ置かれたものかは分からない。
この一度きりの条件成立は、反復なしで条件が成立するFlower Offeringと並べて、第三章で再び検討します。
Film InfernoFilm Inferno
この作品の記述の出典は、筆者による視聴確認です。タイムコードは未設定です。
FACTカップルが、目的を明示されないまま洞窟のような場所に入っていく。
FACT経路に異常がある。同じ場所に戻ってくる、通路の構造が変わる、分岐が増える、以前あった物の位置が変わるといった現象が描かれる。
FACT洞窟内に、大量の人物写真が壁一面に貼られた部屋のような空間が現れる。
FACTこの部屋・写真について、作中で意味や由来は語られず、登場人物もまともに言及しない。
FACTクラシック音楽が流れる場面があるが、音源のみで、演奏している人物は映らない。
FACT洞窟に入った人物・撮影者がその後どうなったかは明示されず、「遭難したのだろう」という程度の受け止めで終わる。
FACT映像は、写真が貼られた部屋の場面のあと途切れて終わる。
FACT映像を保管していた人物が、そもそもそこには洞窟など存在しないと証言する。
FACT行方不明になった男女が所持していたと思われる写真の復元画像が示されるが、そこに写る人物が誰なのか、遺族にも心当たりがない。
FACT最後に、不鮮明な音声と映像による記録シーンが示されるが、何が起きているかは明示されない。
INFERENCE映像の保管者が「洞窟は存在しない」と証言していることから、訪れた場所は通常の探索では確認できない場所である可能性がある。
INFERENCE写真に写る人物の身元が誰にも分からないという点は、Helter Skelterで歪んだ顔の写真が誰の手にも由来を辿れない形で現れることと、構造的に近い。
UNRESOLVED洞窟と思われる場所の正体は不明。
UNRESOLVED壁に貼られた写真の人物が誰かは不明。
UNRESOLVED映像が途切れた理由が、機材の故障か撮影の中断かは明示されない。
出所をたどれない人物写真は、第四章のHelter Skelterに現れる由来不明の写真と構造的に接続します。
BASEMENTBASEMENT
この作品の記述の出典は、筆者による視聴確認です。タイムコードは未設定です。
FACT通常の利用者が映る場面と、異常な降下の場面は、同じ防犯カメラの同じ記録の中にある。
FACT映像には日付と時刻が焼き込まれており(2015-11-17ほか)、時刻は等間隔に進み続ける。
FACT降下は当初、通常どおり10階から始まる。1階に達しても停止せず、階数表示は1階のまま数秒固着し、その後は表示が乱れたまま数分にわたり下降が続く。
FACT異常な下降が続く間、その像に、通常の利用者らしき人影が稀に重なって映り込む。
FACTその間、対象の女性は一貫して独りでいるように見える。
FACT下降しきった先で初めて扉が開閉するが、階数表示は完全な空白になる。
FACT扉の外の様子は監視カメラの画角だけでは判別できない。
FACTその直後、扉が閉じ、エレベーターは自動的に上昇し、女性のその後は映らない。
FACT冒頭で「ひとりの女性が僅か4分の間に姿を消す事件があった」と提示される。
FACT他の利用者が対象の女性に気づく様子はない。人影が重なって見える場面はあるが、互いに反応するそぶりはなく、同じ座標に異なる層が重なっているように見える。
INFERENCE通常の運行と異常な降下は、同じ記録・同じ連続した時間の中に共存している。
INFERENCEすれ違うように見える場面は、同一空間の中の別の状態が重なって記録されたものである可能性がある。ただし人物同士が実際に同じ空間にいたとは確認できない。
UNRESOLVED扉の外に何があるかは、映像から判別できない。
UNRESOLVED女性がその後どうなったかは、映像に映っていない。
UNRESOLVED表示の乱れが、記録の異常なのか、二つの状態が重なった結果なのかは、映像だけからは決定できない。
PassengersPassengers
この作品の記述の出典は、筆者による視聴確認です。タイムコードは未設定です。
FACT前野氏は、冒頭から通常のインタビュー形式で登場する。作品は、彼がすでに死亡・行方不明であるという前提を先に示さない。
FACTファミレスでの出来事は映像としては示されず、前野氏の口頭の証言のみで語られる。
FACT前野氏の証言によれば、その場にいた二人は終始無言だったとされる。
FACTファミレスでの無言の時間のあと、何が起きたかは語られない。
FACTその後、当時の収録現場へ向かうことになる。
FACT道中に、景色の変化や時間の飛びなど、異常とみなせる描写はない。
FACT目的地に到着すると、前野氏の記憶では山中だったはずの場所が、実際には開墾されて墓地になっている。墓石も最近建てられたものではなく、すでに長期間そこにあったかのように敷地の大部分が埋まっている。
FACT前野氏はこの景色の違いに困惑する。何かがおかしいと感じている様子は示されるが、それが何を意味するかは理解できていない。
INFERENCE前野氏の記憶にある山中と、到着した場所の実際の状態である長期間存在する墓地としてほぼ埋まっている景色が食い違っている。
INFERENCE前野氏自身がこの食い違いに困惑を示すことは、彼が何らかの異常を感覚的に察知しながら、その意味を正しく理解できていない状態にあることを示唆する。
INFERENCEこの構成は、前野氏がすでに死亡している、あるいは自身の状況を正しく認識できていない状態にあることを示唆する。ただし推論であり、作中で明言されているわけではない。
UNRESOLVED前野氏が生きているか死んでいるかは、作中で明示されない。
UNRESOLVEDファミレスに同席していたもう一人の人物のその後は示されない。
UNRESOLVED目的地がなぜ「当時の収録現場」なのかは説明されない。
UNRESOLVED墓地が前野氏の記憶する場所と物理的に同一の場所なのか、それとも別の状態の同じ場所を指しているのかは確認できない。
UNRESOLVED前野氏の困惑がその後どう展開するか、追及するのか諦めるのかは示されない。
章末の要約
Strange Messagesは単一番号へ声が届くだけで、再生変化を試していません。Telephone Numberは声の部分接続に見えても応答の有無を確定できず、Hidden linkは同構造の16ページを経由しても最深部を確定できません。
Bivouacは一度きりの野営地、Film Infernoは変形する経路、BASEMENTは同じ連続記録に重なる二状態、Passengersは記憶の山中と長く存在する墓地の食い違いを示します。接続は情報、宛先、経路、場所、移動者に現れるように見えますが、見えない先や人物の生死を補わず、入力・移動・出口の観察に留めます。