FAKE DOCUMENTARY “Q” 非公式考察 / CHAPTER 03

条件は、どこまで見えているのか

ここは二つの読みが分岐する章です。ただし、最初から対立するのではありません。条件があること、条件が揃うと現象が起きること、記録媒体が重要であることまでは、共有範囲として先に置きます。

まず、共有範囲を示す

相馬氏の読みと本記事の読みは、条件そのものを否定し合っているわけではありません。何らかの条件があり、条件が成立すると現象が起き、記録媒体がその条件の一部として働く。観測可能な断片に規則性がある。ここまでは共通の足場です。

共有範囲を先に示すことで、後の分岐が「条件の有無」ではなく「条件の背後に何を仮定するか」だと分かるようにします。

条件、現象、記録媒体、規則性について相馬氏の読みと本記事の読みが共有する範囲を示した模式図。
条件について、どこまで一致しているか模式図。二つの読みの共有範囲を示します。

ここで一致しているのは観察の入口です。相馬氏はその背後に判決理由や行政機構を読み、本記事は再現条件が未特定であるところに留めます。

再現条件という言葉

本記事でいう再現条件は、人物・場所・時間・物体・行動・順序・観測など、複数の変数の組み合わせです。数が一つだけ増えれば起きるという意味ではなく、必要な組み合わせがまだ特定できていないという意味で使います。

反復を単独の原因にせず、複数の変数の組み合わせとして考えるための定義図です。

人物、場所、時間、物体、行動、順序、観測の変数が組み合わさって再現条件になることを示す模式図。
再現条件用語の定義図。具体的な作品の条件式を示したものではありません。

Exorcismで荒木が語る「波長が合わなければ何も起こらない」は再現条件に近い説明ですが、劇中人物の説明であって作品全体の公式ルールではありません。撮影者が準備を手伝う点は、観測自体が工程へ入る可能性を残します。

Take100を局所比較にする

Take100は、反復をシリーズ全体の原理へ拡張するためではなく、記録された反復の一例として局所比較します。相馬氏も「100」を魔法の数とせず、フィルムの技術的制約から読む点で一致しています。

残る違いを、「記録された反復が異変を加算する」のか、「条件へのヒット状況を探した履歴」なのかに分けます。

テイクを重ねた記録を、異変の加算と条件へのヒットの二つの読みへ分けて示した仮説図。
Take100 — 加算か、条件へのヒットか仮説図。どちらかを作品の結論として確定していません。

Take100では43テイク目付近から異変が現れ、増減しながらテイク100で映像が途絶えます。しかし撮り直しの理由も、その後も不明です。「100」に特別な意味づけがない以上、加算か条件へのヒットかは決められません。

一回目でも、条件が揃えば起きるのか

反復が続いている限り何も起きないという読み方と、一回目でも条件が揃えば接続しうるという読み方は、同じ場面に対して異なる焦点を置きます。Flower Offeringは反復の反証ではありません。相馬氏自身が、花が置かれ続ける間に被害が生じていない例として使っています。

献花を「反復が燃料になるか」の反例にせず、転換点と条件の関係を考える図にします。

花を置き続ける行為と、条件が変わる転換点を分けて示した模式図。
献花 — 転換点はどこか模式図。反復の量だけで結果を決めないための補助資料です。

Flower Offeringでは仏花と写真断片が置かれ、後日の再訪時には何もありません。Bivouacと同じく、異常までの反復が示されない条件成立として読めますが、誰が置いたか、何が転換点だったかは不明です。

Take100

Take100

この作品の記述の出典は、筆者による視聴確認です。タイムコードは未設定です。

FACT映像の再生前に、所有者が解説を行う。

FACT撮影されているのは日常の会話シーンに見える。

FACT序盤は何も起きず、43テイク目あたりで一度影のようなものが映るが、その後落ち着く。

FACT以降、異変は増減を繰り返しながら終盤へ向かう。

FACTテイク100で、女性の顔部分がノイズにまみれて引き延ばされたようになり、映像自体がそこで途絶える。それ以降は不明。

FACTなぜ何度も撮り直しているのかは、作中で語られない。

FACT「日本映画史に存在しない」という煽り文句以外に、100という回数への特別な意味づけは見られない。

FACT撮影者・被写体のその後は不明。

UNRESOLVED撮り直しの理由、テイク100以降の展開は不明。

Obscure

Obscure

この作品の記述の出典は、筆者による視聴確認です。一部の発言にはタイムコード付きのYouTubeリンクを付記しています。それ以外はタイムコードは未設定です。

FACTブログの運営者は写真スタジオの学生バイト。依頼者は不明。

FACT依頼内容は「不気味な画像をもう一枚の写真に合成してほしい」のみ。 (3:31)

FACT約5か月間で74枚の依頼があった(作中の画面テキストによる)。それぞれは単発の依頼。

FACT合成される顔は毎回同じ。貼り付け先の画像は毎回異なるように見えるが、全件が一覧になっているわけではなく、重複があったかは不明。

FACTブログの最新(冒頭)記事で、運営者は次のように書いている(作中の画面テキストをそのまま引用):「たまたま見上げた空が偶然この気持ち悪い顔の空…こんな事が最近ずっと続いています。ずーっとです。やはり、僕の方にも何か問題が起こるかも。だからこれ以上ブログを更新する事はやめにします。何かあった時の為に全部残しておく事にしますので、万が一の時はみなさんにお任せします。」 (0:07)

FACT依頼者・作業者のその後は不明。

UNRESOLVED74枚の依頼に重複があったかは不明。

UNRESOLVED依頼者の正体、合成された顔の由来は明かされない。

What the deceased left behind

What the deceased left behind

この作品の音声・発言に関する記述の出典は、公式チャンネルの日本語字幕です。一部の発言にはタイムコード付きのYouTubeリンクを付記しています。それ以外はタイムコードは未設定です。

FACTナレーションによれば、撮影者の友人ナオトさんは十数年前にこの山で命を落とした。

FACT死因は薬の過剰摂取で、ナレーションは「それは自らが望んだものであった」と述べる。 (0:48)

FACT遺体は発見されたが、所持していた荷物は遺体と共に発見されなかった。

FACT友人達は、ナオトさんの命日に供養と同窓会を兼ねた登山を毎年行っている。

FACT友人達は、当時ナオトさんが心の病気だったのかもしれないと今になって思うと語る。

FACT亡くなる前、ナオトさんは「幽霊の姿が見える」と周囲に話していたとナレーションが述べる。 (2:56)

FACT登山中、友人達は現場周辺のゴミを拾い、きれいにする。

FACT友人の一人が見覚えのある眼鏡から、見つかった鞄がナオトさんの私物だと気づく。

FACT友人はナオトさんがよくこの種のカメラでスナップ写真を撮っていたと証言する。

FACT遺族に確認してもらうため、鞄を持ち帰ることにする。

FACT後日、デジタルカメラのデータを確認した結果、この荷物は間違いなくナオトさんの物だと証明されたとナレーションが述べる。

FACT復元された写真は、データ破損のため大きなノイズがある。

FACT生前のナオトさんが写る写真のあと、以降はすべてあの山だと思われる写真だった。

FACTある写真には、ナオトさんの先を歩く人物の後ろ姿が写っており、ナレーションはその後ろ姿がナオトさんにそっくりだと述べ、「誰か別の人が撮影したのだろうか?」と問いを投げかける。 (6:33)

FACTデジカメに残された最後の写真について、ナレーションは「生前ナオトさんが言っていた“幽霊”の姿なのだろうか?」と述べる。 (7:29)

FACT友人達は今も一年に一度、慰霊登山を行っている。

INFERENCEナオトさんに酷似した後ろ姿の人物が写る写真は、ナオトさん自身が撮影者であれば説明が難しく、別人の可能性、あるいは説明のつかない写り込みの可能性が残る。

UNRESOLVEDその後ろ姿の人物が誰なのかは明示されない。

UNRESOLVED最後の写真が本当に「幽霊」を写したものかは、ナレーションの問いかけのままで確定されない。

UNRESOLVEDナオトさんの死が、自死という説明を超えて何らかの現象と関係していたのかは示されない。

Exorcism

Exorcism

この作品の音声・発言に関する記述の出典は、公式チャンネルの日本語字幕です。一部の発言にはタイムコード付きのYouTubeリンクを付記しています。それ以外はタイムコードは未設定です。

FACTカメラマンと依頼者が、山の奥まで移動したうえで、ある家を訪れる。

FACT家に入る前、カメラマンが録画を止めることを一度提案し、「勿体ないから」という理由で録画を続けている。 (1:13)

FACT家の中で、拝み屋と思われる人物(「荒木」と名乗る)に迎えられる。 (1:40)

FACT依頼内容として「祟り」という言葉が使われる。 (2:57)

FACT荒木は、「鬼門」(鬼が通る方角)という概念を説明し、「普通迷い込んでも波長が合わなかったら何も起こりませんけどね?まあ、今回…多分」と述べる。 (5:26)

FACT荒木は対象を「迷子」のようなものだと表現する。 (6:15)

FACT儀式が始まる前、カメラマンは着替えを手伝うよう頼まれ、「これをねじゃあここに着けてくれるかな」という指示のもとカメラマンが手伝う。 (7:22)

FACT儀式の終盤、「怖いなあ?大丈夫や…大丈夫やもう怖ないぞもう出て行っていいぞ」という、何かをなだめる言葉が発せられる。 (9:54)

FACTその後「抑えろ」という指示があり、「大丈夫…大丈夫…」という言葉で終わる。 (11:03)

INFERENCE荒木が説明する「波長が合わなかったら何も起こらない」という論理は、この記録の「再現条件」という考え方と構造的に近い。相馬氏の読みとの対比材料としても、本記事の読みを補強する材料としても使える。ただしこれは劇中の一人物の説明であり、作品全体の公式なルールではない。 (5:26)

INFERENCEカメラマンが儀式の準備を手伝っていることから、撮影が単なる記録ではなく、工程の一部に組み込まれている可能性がある。

UNRESOLVED「祟り」の具体的な原因、家の過去の経緯は明かされない。 (2:57)

UNRESOLVEDなだめられている対象が何なのか、儀式の成否は明示されない。

Flower Offering

Flower Offering

この作品の音声・発言に関する記述の出典は、公式チャンネルの日本語字幕です。一部の発言にはタイムコード付きのYouTubeリンクを付記しています。それ以外はタイムコードは未設定です。

FACTスタッフが、玄関先の異変について住人へ聞き取りを行う場面がある。

FACTある女性住人は、不快感を覚えたと述べ、管理人に相談したが特に説明は得られなかったと話す。

FACT別の男性住人(S)は、岡山から広島へ単身赴任してきたと述べる。

FACTその住人の家の前に、仏花(仏事に用いる供花)が置かれているのが確認される。

FACTスタッフは「嫌がらせなのかな…」と口にする。 (3:12)

FACT置かれていたものの中に、紙のような硬いものがあり、調べると写真であることが分かる。

FACT写真の断片を組み合わせる作業が行われ、頭部の形、子供の顔のようなものが浮かび上がる場面がある。

FACTスタッフは、管理会社や警察へ連絡することも考えると話すが、「どうしようも無いですよね」という発言で終わる。 (8:49)

FACT後日の再訪時、住人は「ない」(今回は何も置かれていない)と述べ、証拠として残す提案をスタッフから受け入れる。

INFERENCE写真の断片を組み合わせて子供の顔の像を作るという手法は、HELTER SKELTERの歪んだ顔写真や、OBSCUREの顔の合成という反復モチーフに近い。

UNRESOLVED誰が、何の目的でこれを置いているのかは明かされない。

UNRESOLVED作中がこれを最終的に「悪質なイタズラ」として片付けるのか、未解決のまま終えるのかは、この音声だけでは判断できない(視覚的なテロップ等の確認が必要)。

写真断片から顔の像を作る操作は、Helter Skelterの出所不明の顔写真、Obscureの顔合成と反復するモチーフです。

章末の要約

Take100の反復、Obscureの74件の合成、遺品の写真、Exorcismの波長と準備、Flower Offeringの一度きりに見える配置は、条件が回数だけではないことを示します。反復で異変が加算したのか、条件へ当たった履歴なのかは決まりません。

顔の像を作る操作はObscure、Flower Offering、Helter Skelterへ反復し、遺品の写真にも出所を確定できない人物が残ります。それでも、条件の背後に判決・罪状・秘匿主体・統一組織までを置かず、再現条件が未特定であるところに留めます。